歯みがき粉

歯みがきをする時に、ペースト状もしくは液体の歯みがき剤を使う方が多いと思います。いろいろな味や効能があります。製品の形状としては、金属のチューブに詰められたものが一番普及していますが、チューブの他に缶や瓶に詰められたものもあります。日本では薬事法で、化粧品・薬用化粧品(医薬部外品)に分類されています。

歯みがき粉(歯磨剤)の歴史

最初の歯磨剤は、紀元前1550年頃の古代エジプトの医学書の内容が記載されたパピルスからと言われています。「練り歯磨き」と「粉歯磨き」のことが全長21mの長さのパピルスに記載されています。そのエジプトでは、4世紀頃には食塩・黒胡椒・ミントの葉・アイリスの花を混ぜ合わせた粉末の歯磨剤が使用されていました。古代ローマでは、人間の尿に含まれているアンモニアが歯を白くするものと考えられ、尿が歯磨剤として用いられていました。そして、帝政ローマ時代になると歯磨剤の原料は、卵の殻を焼いた灰や動物の骨を焼いた骨灰を使って歯磨き粉をつくっていたそうです。

そして、歯みがき粉の他にも、うがい剤として用いられたのが「尿」です。古代ローマ時代にも尿のアンモニアが使われていましたが、処女の尿や朝夕に採った少女の尿でうがい剤が作られ、うがい剤として18世紀まで続いていたそうです。その当時には、有名な歯医師達もこのうがい剤は効果があるとうたっていたそうです。

日本で一番最初に歯磨剤が使用されたといわれているのが、応神天皇270-310(宇美神社の祭神)、仁徳天皇313-399の頃と言われています。歯磨剤として使われたのが「塩」で磨いていたといわれています。仏教の伝来された552年に、中国から楊枝と一緒に、塩で磨くことも伝えられたといわれています。その根拠として、遣唐使・遣隋使があります。唐の時代では歯を楊枝で磨き、歯磨剤としては塩を使っているといった風習を遣唐使・遣隋使が日本国内へと持ち帰り伝えられていきました。遣唐使・遣隋使の報告以外には、江戸時代まで歯磨剤の使用の記述が古文書などで見つかりませんが、おそらく指や爪楊枝を使い塩を用いていたと考えられます。

ヨーロッパではどうだったのでしょうか。フランス(14世紀)では、お酢+蜂蜜+焼塩=歯磨剤や、野生のハッカや胡椒入りの白ワインでうがい剤としてうがいをしていたようです。お酢と塩は分かりますが、蜂蜜を使用していたというのが、その当時を考えるととても贅沢の象徴のようにも思えます。そして15世紀頃には、ニッキ(桂皮)などを入れたワインでまず最初にうがいをします。うがいの後に、蜂蜜と砂糖の混合物や、野ウサギの頭蓋骨の骨を焼き灰にした物と焼き塩を、蜂蜜でのり剤にしたもので磨いていたといいます。のり剤、ペースト状にした所が大きく進歩したといえるのではないでしょうか。そして、16世紀にはタバコの灰を歯みがき粉に応用したものもありました。たばこは、1492年コロンブスがアメリカ大陸を発見した際に、ヨーロッパに持ち帰ったので、たばこが用いられるようになったと思われます。

日本では江戸時代の1625年(寛永2年)に、丁字屋喜左衛門が江戸で「丁字屋歯磨」「大明香薬」と呼ばれる歯磨き粉を販売開始をしました。当時、朝鮮半島から来た人々から、歯みがき粉の作り方を習い製造したといわれています。その歯磨き粉の成分は琢砂という非常に目の細かい研磨砂です。そして、江戸時代の歯磨剤は砂の他に陶土を使っていました。それが江戸時代の歯磨き粉の特徴といえるでしょう。研磨剤の他には丁字や龍脳などの各種漢方薬を配合していました。そしてキャッチコピーもあり、「歯を白くする」「口の悪しき匂いを去る」といった、現在でもよく耳にするキャッチコピーが添えられていました。1789年~1800年頃には、歯磨剤の宣伝文(引札)が多く見られるようになり、、文筆家や浮世絵師が書いていました。たとえば、平賀源内(医者・俳人)、為永春水(文筆家)、式亭三馬(浮世絵師)、十返舎一九(文筆家で浮世絵師)、などが有名です。

薬屋でもあった式亭三馬は、自作の中で歯磨剤や化粧の効能を派手に宣伝をしました。歯磨剤は「箱入り匂い歯磨剤」と、老人女性用の厚化粧である「老婦人化粧」やその他「毛はえ薬」などを製造・販売しました。薬のお客さんが読者にもなり、生活は豊かになりました。一方、滝沢馬琴(南総里見八犬伝が有名)は自作の本の巻末に控えめに宣伝を載せました。万病薬の「奇応丸」や、歯磨剤の「蛤処方」などが有名ですが、馬琴自身が製造した歯磨剤を使ったであろうが、50半ばで総入れ歯になったといいます。歯みがき剤として効果はいかがなものか・・。といったところでしょう。

そして江戸の庶民は、この頃には歯みがきを行うことが日常習慣になっていました。この類の歯磨き粉と房楊枝を使用して歯磨きを行っていたようです。当時の浅草寺には200軒もの房楊枝屋が並ぶほどの繁盛ぶりでした。その頃の歯みがき粉は、お風呂屋さん(湯屋)や神社の境内、雑貨店などで売られていたそうです。

18世紀のアメリカ合衆国での歯みがき粉はどうだっったのでしょうか。アメリカでは、焦げたパンを混ぜ合わせた歯みがき剤が使われていたことが明らかになっています。また、「ドラゴンの血」(※1)(dragon's blood)と呼ばれる混合樹脂にシナモンや焦がしたミョウバン(※2)を混ぜた歯みがき剤もあったようです。

焦げたパンや焦がしたミョウバンは、おそらく研磨剤として役割を果たすべく入れられていたのかもしれません。

18世紀のアメリカは、怪しげ?な歯みがき粉でしたが、19世紀以降に広く欧米で歯みがき粉が使用されるようになりました。1800年代初頭には、歯磨きをする時には、主に歯ブラシと水だけで行われていたようです。その後間もなく粉末の歯磨剤が大衆に広まっていきました。その頃の歯磨剤の多くは自家製で、チョークの粉・細かく砕いた煉瓦に食塩などがよく混ぜられていました。1866年、ある家庭百科事典で、勧められていた歯磨き粉は、細かく砕いた木炭を歯磨剤として使用することを勧めています。そしてその同事典は、その頃特許を取って市販されていた多くの歯磨剤は、益よりも害が多いものだとしていて、大衆に注意を促してもいました。

1900年頃になると、過酸化水素や炭酸水素ナトリウムを含んだペースト状の歯磨剤が勧められるようになりました。ペースト状の歯磨剤そのものは19世紀にはすでに売り出されていましたが、粉末状のものに取って代わるようになったのは第一次世界大戦が終わる頃のことでした。現在のようなチューブに入ったペースト状の歯磨剤は、1896年にニューヨークでコルゲート社(※3)(Colgate & Company)によって初めて売り出されました。

日本では、1888年(明治21年)現資生堂が日本初の練歯磨剤として、「福原衛生歯磨石鹸」を発売しました。(現在は撤退している)海軍の軍艦用として、使用されていたようです。この練歯磨剤が日本第一号の練歯みがき粉ということになります。そして、1911年(明治44年)に、ライオンが「ライオン固練りチューブ入り歯磨」を販売しました。日本初のチューブ入りの幕開けとなりました。

1914年には、フッ素化合物が配合された歯磨剤が初めて登場しました。このフッ化物入りの歯磨剤は1937年にアメリカ歯科医師会(ADA)(American Dental Association)によってフッ素化合物入りの歯磨剤は、批判の的となりました。しかしその後は、どんどん改良が続くことになり、遂に1950年代、ADAはフッ化物入りの歯磨剤を認証しました。現在、フッ化物の適正使用量および制限は国によって異なっています。アフリカ諸国の多くでは、アメリカ大陸よりもやや高い濃度でフッ化物を配合することが認められています。日本ではライオンが1948年(昭和23年)日本初のフッ素入り歯みがきとして「ライオンFクリーム」を発売しています。

最近では、人体の骨と親和性の高い燐灰石(りんかいせき)を含む歯磨剤が開発されています。

※1一節によると、「ドラゴンの血」はクロトン・レシュレリという樹木です。その樹木は1000年以上も前から生息しているといわれています。

※2 ミョウバンは古代ローマ時代から、染色剤・防水材・消火剤などいろいろな用途で使われてきていました。

※3、「コルゲート」は、世界100カ国以上で多くの人々に愛用されているベストセラー歯みがきです。赤字に白のロゴ「Colgate」のロゴは、誕生してから変わることのないブランドとして地位を確立しています。日本で「コルゲート」ブランド知られるようになったのは第二次世界大戦後の頃です。「PXストア」と呼ばれる米軍キャンプ内のスーパーマーケットで「コルゲート」の練り歯磨き粉が売っていることがきっかけです。戦後は特に食べ物さえもまともに手元に入らない時代でした。そんな時代に、色鮮やかなチューブに入った練り歯磨き粉は、まさに「豊かさの象徴」として人々の目に焼きつきました。沖縄では今でも「コルゲート」が歯磨き粉を指す意味の代名詞となっています。

虫歯ゼロを目指して

歯磨剤の成分

歯磨剤の基本成分は研磨剤と発泡剤を主成分としています。それに、保湿剤や結合材などがあります。近年は、フッ素を始めとする薬用成分が含まれる歯磨剤が増加しています。日本では、薬事法により、基本成分のみの歯磨剤は化粧品歯磨剤に、基本成分の他に薬用成分が含まれている歯磨剤は医薬部外品歯磨剤に分類されています(薬事法第2条)。少数ではありますが医薬品の歯磨剤も存在しています。

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薬効成分

フッ化物(フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ)が最もよく知られていて、有効性が確立されている薬効成分です。虫歯予防の目的で入れられているので、1990年のFDIの調査で口腔保健の先進国では90%を超える普及率を示しています。日本では、近年になってフッ素が含まれている歯磨剤のシェアが上昇していますが、2008年現在で市販されている歯磨剤のうち、フッ化物配合歯磨剤は89%です。日本においては薬事法によりフッ化物イオン濃度は1000ppm以下に規制されています。市販のフッ化物配合歯磨剤における濃度はほぼ900ppmから950ppmです。

研磨剤の強力な製品には歯のホワイトニング効果、殺菌剤を添加したものには歯肉炎予防効果があります。

歯垢分解酵素のデキストラナーゼや、殺菌、歯垢形成抑制作用のあるクロルヘキシジン、血液循環促進・収斂・浮腫抑制作用のある塩化ナトリウム、消炎作用のある塩化リゾチームなどが知られています。

21世紀における国民健康づくり運動において、学齢期におけるフッ化物配合歯磨剤使用者の割合を2010年までに90%以上とする目標が立てられました。1991年の調査では45.6%、平成16年国民健康・栄養調査結果の概要によると、1~14歳児におけフッ化物配合歯磨剤の利用割合は、52.5%、最終報告では86.3%となっているため、目標値の達成は出来きませんでしたが、使用者がフッ化物配合か否かを認識していない可能性や、フッ化物配合歯磨剤が歯磨剤に占める割合は現在約90%となっていることから、実際の数字はさらに高いと考えられています。

基本成分
研磨剤
リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等が使われています。
発泡剤
ラウロイルサルコシンソーダ、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル等が使われています。
保湿剤
ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール等が使われています。
結合材
アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等が使われています。